楽曲「The Hunter」について初めて語られる物語
Nov 21, 2020
君が元気だと良いな!限定&コレクターエディション旋盤カットレコード「The Hunter (By the Seaside Window)」の最後のコピーを手に入れるチャンスを掴んでくれた人の中から、Facebook生中継でAlexに名前を引かれたラッキーな人たちを発表できて、嬉しく思っているよ。みんな、おめでとう!
それはそうと、リストに名前が載っているハッピーな人たちよりも、たくさんの人たちが、ガッカリしていることだろう。だから、このユニークなプロジェクトに参加してくれただけでなく、そのプロセス全体を特別なものにしてくれて、本当にどうもありがう!Alexと僕にとっては、いつだってシンプルに集まって、分かち合って、音楽を通して記憶に残るような意味深い瞬間を生み出す方法を見つけることについてなんだ。だからこそ、早い者勝ちとか、争奪戦みたいな感じにはしたくなかったんだよね。
そして、忘れないで。「The Hunter (By the Seaside Window)」旋盤カットレコードを手にできた人も、できなかった人も、また別のチャンスがあるよ!次の限定&コレクター旋盤カットレコードは楽曲「Lavender Sky」で、日本時間の11月30日24時(12月1日 深夜0時)から先行販売が開始されるよ。
BY THE SEASIDE WINDOW
僕は今、ドラモンヴィルにあるレーベル本部のオフィスで、ゆっくりと日が沈んでいくのを見ながら、これを書いているよ。もうすぐ午後5時だ。普段はポジティブにうるさくて、活気に満ちているオフィスが、なんだか今はとても穏やかだよ。
みんなと何をシェアしたいか、なかなか言葉にできずにいる。というのも楽曲「The Hunter (By the Seaside Window)」は、僕らにとって、曲という枠を超えて意味のあるものだから。けど、今、頭に浮かんでるのは、曲を弾き始める時に体や心に感じる特別な感覚だよ…たとえリハーサルでも、ライブでも、僕の心を震わせ、まるで人生が変わるかのような印象を与えてくれるんだ…この曲は、バンドとしてのこれまでの歴史を要約し、常に持っていた葛藤や、生きてると感じるための戦い、バンドの一員として演奏するのに”ふさわしい”かどうかについての疑い(YFE時代はギターを弾いていたんだけど、The Long Shadowsではベースを弾くようになってようやく決着がついたんだ)、そしてAlexが自分自身を見つけるためにした心痛むような旅路などの全てが詰まっている。
窓の外を見ながら、2019年7月5日に開催したモントリオール国際ジャズフェスティバルでの夜のことを思い出さずにはいられないよ。ソールドアウトの会場でヘッドライナーを務めるだけでなく、世界でも評判の高いこのフェスティバルの40周年記念において、最も注目を浴びたコンサートだったんだ。そして、僕らにとって何よりも大事だったのは、このイベントが、5年前の、ほぼ開催日と同じ日に亡くなったAlexのお父さんへのオマージュだったということ…それを彼の家族、亡きお父さんの友人たち、長年の地元の友人たちから、日本、ドイツ、UK、フランス、アメリカやケベック州全土からAlexをサポートしに来てくれた人たちの前で分かち合う、とても胸を打つ瞬間だったということ。そして、Your Favorite Enemiesとして最後にライヴをしてから3年ぶりに、さらにアップグレードしたバージョンのパフォーマンスをすることは、Alexとしても、とても深い気持ちを抱いていたに違いない。
実際、僕ら一人一人も、それぞれの抱える現実の中で、様々な感情を抱いていた。その中心になるのが、このソウルフルな意味を持つコンサートだった。けれど、その底辺にあったのは激しい感情だ。だって、Alexにとっては一度限りのイベントであって、その後、またステージへと完全に戻るかどうかは決めかねていたから。このプロジェクトのはじめから、彼はとても正直だった…だから、”コンサートを素晴らしいものにしよう、そうすれば彼も続けたいと思うだろう”なんてものではなく、それはノスタルジアでさえなく、それは驚くべきほどに”本物”だったんだ…僕らは何か本当にユニークなものを経験しようとしてると確信していたよ。まるで、その後の自分の人生がどうなるかが、このコンサートで決まるかのような…でも、きっと奇跡的なことが起こるなんてことを言いたくはなかったんだ。だって、利己的に自分のことを考え始めた瞬間に、周りの全てが哀れにも崩れ去っていくことが多いから…だから、僕は何よりも今この瞬間に集中することにした。そうして「はい、あと5分でステージです!」っていう声を聞いたんだ。
全てが見事だったよ…感情、パフォーマンス、雰囲気、空気感。僕は完全にそのゾーンに浸っていて、リズムを指揮するAlexと繋がり、残りのバンドとも一体となって、Alexのダイナミクスと高揚に沿って演奏したんだ。そうして、「The Hunter」を演奏するときがきた。Alexの合図と共に、僕の音から始まる曲だ。僕が少しパニックになるのは、そのとき。曲が始まるときは、どこにも隠れる場所がないし、セカンドチャンスもない…やるしかないんだ!やるか、やられるか!たとえ何千回とそのパートを弾いてきたとしても、ほんの一瞬、躊躇するだけで、全てが落胆と恥の上に崩れ落ちる。そう、ステージにいるときは、1秒の間でも色々なことが頭をよぎるんだよ。Alexと一緒だと、尚更!
だから、弾き始めようとしたとき、僕は目を閉じて、深く深く深呼吸をした。(永遠に続くかのように感じたよ)そして、Alexが一人でタンジェに向かう前、空港まで送っていったときのことを思い出したんだ。それは僕らが2001年に出会ってから、初めてのことだった…バンド内や僕らの仲がどうなっていたか覚えてる。僕らにとってまさにお先真っ暗な感じで、まるで真夜中に濃い霧の中を歩くようだった。みんなが不確かさを感じていて、もしかしたら、これが旅の終わりかもしれないっていう恐怖さえ感じたんだ。僕らはまるで血の繋がった兄弟のようだったけど、その時は、そうじゃないのかもって思っていた。そうして、ゆっくりと目を開けるとAlexが僕を見ていたんだ。優しく、自信に満ちた笑顔で、僕にウインクをした。まるで、”やろうぜ、ブラザー!僕らは今ここに立ってる!今まさに起きてるんだ!”って言っているかのように。
曲の最初の音を弾き始めた途端、「The Hunter」が始まったと気づいた観客が歓声をあげた。僕はステージを見渡し、Alexの横にはBen、そしてSef、スモークや照明の向こう側にMiss IsabelとMooseと他のミュージシャンたちを見た。僕はAlexが単身タンジェに発った、およそ1年後、初めてバンドメンバー全員でタンジェに降り立ったときのイメージを思い浮かべたよ。誰も何を期待して良いのか分からなかった。みんな心の中で葛藤していたんだ。Alexが生き延びるために築き上げたものを、遂に去るようになるまでに、自分が彼に与えた苦痛に罪の意識を感じていた人たちもいた。Alexの親友として、それを受け止めるのは一番キツかった…だから、僕らはこの旅で得られる最高を望んだんだ。だって、こういう旅が許しや和解へと導いてくれるかもしれないと信じたかったから。でも、自分を常に悩ませ続けてきたもの無しで生きる人生はずっと良いものだって気づくのに、1年という期間が十分な長さだということも分かっていた。特に、感情的に痛めつけられたAlexにとってみればね。けれど、Alexが会話をしようと僕らを招待してくれたから、その1週間の旅に更に厳粛なトーンを与えたんだ。たくさんの償いが必要だった。そして、僕らはAlexの北アフリカの世界へと入っていこうとしていたんだ。彼の新しい友人たちや、新しい人生、新しい現実と共にね。そういう中で、僕らには何が残っているのかを知ろうとしていた…僕は、Alexが別人になっていて、気がつかなかったらどうしようかと怖かったよ。でも、そういう経験を超えて、僕らはみんなで3年ぶりにステージに立っていたんだ。
”息を吸う。息を吐く。ハンターが来る。ハンターが来る”と、Alexが熱気を帯びた観客に向かって、力いっぱい叫んだ。数年ぶりのステージ演奏で、まだライブで披露したことのない曲を演るって考えただけでも、クレイジーだよ。益々、熱くなっていく観客を見るだけでも、僕はすごく慎ましい気持ちだった…色んなイメージが込み上げてきたんだ…壊れてしまった友情が奇跡的にもモロッコの伝統的なリアドで再び繋がりあったところから、Your Favorite Enemiesとしてここ数年Alexがどんな思いを抱えていたかを話してくれた瞬間、癒すべきものを癒すためにAlexが僕らを6ヶ月間モロッコへと招待したことから、ドラモンヴィルのUpper Room Studioへと戻り、彼のアルバムに参加しないかと誘ってくれたこと、そしてヴァージニアのハイランドにある彼の家で意義深い時間を一緒に過ごしたことまで…Alexの歌詞は様々な角度から鳴り響いていたんだ。
実は今、Alexがこの時期のことについて本を書いている最中だから、あまり細かくは話さないよ。もう既に色々と話しちゃってる気がするけども!
このコンサートの写真をあとで見る機会があったんだけど、この曲のとき、僕は穏やかに微笑んでいたんだ。いつもは結構、ステージで泣くんだけどね。だってAlexの音楽はすごくエモーショナルで、自分との関わりも深いだけに、湧き上がる激しい感情を制御し切れないんだよ…時に悩ましいほどにね。あまりにも大きな感覚だからこそ、そこに身を任せなければ、完全に跳ね飛ばされちゃうんだ。まるで空気の中に漂う目に見えないものへと近づくことすら許されないから、ストームが自分を岸へと突き返すように。でも、また別のタイプの激しさもあるのさ。そう、The Long ShadowのギタリストであるBenが、自分のギターをそっと置いて、セカンドドラムキットへと歩いていく瞬間とか!それは僕の後ろにあるステージの2段目で披露されるものなんだ。そうさ、ミュージシャンが11人いる場合、ステージ上に2段目となるフロアが必要なのさ!
この曲でも、僕のお気に入りのパートが始まろうとしていた…!そして、会場がまた別レベルでの叫びと熱気に包まれようとしていた時、僕はBenに向かってウインクしたんだ。だって、僕ら二人とも、このツインドラムのクレイジーなアイディアの誕生がどれだけシンボリックで、僕らの新しいクリエイティビティを刺激したか覚えてるからね…"全ては可能である、ってのは自分の限界から自由になると決めたときに形となるのを待っている新しい可能性なのさ"。リハーサルセッションでAlexが指揮を取りながら言った言葉だよ…!選択肢は拒否するか、まるで一緒に散歩をしにいくように参加するかのどっちかなんだ。このツインドラムのアイディアを閃いた時みたいにね!何日間も「The Hunter」に費やして、ようやく20分ほどのしっかりしたライヴ構成が見えてきたって時に、Alexが僕らに弾き続けて、と言いながらBenと何やら話に行ったんだ。そうして、Benがギターを置き、たった今Alexが用意した2つ目のドラムキットのシートに座った。AlexはBenのギターを持ち、コントロールされたフィードバックと膨らみのある低音のノイズを弾きながら、聞いたこともない歌詞を歌い始めたんだ…!
ギター担当のBenは、10年以上もAlexのソングライティング・パートナーで、彼の手にかかればテーブルだってメロディーを生み出せるくらい才能あるミュージシャンだ。素晴らしいギター演奏と同じくらい、ベースも弾けるし、ドラムもピアノも歌もできるし、さらにレコーディングやミキシングまでできる…Benの朝食はサウンドやメロディーだろうね!だから、Alexが思い描く音や、時に色に例えて説明する音(本当の話!)を解読するのに適任なんだよ!二人は芸術面でお互いを補い合えるだけでなく、他のメンバーをより良く見せる方法も知ってる。けれど、たとえBenが、タンジェ後、新たに生まれ変わったAlexを完全にサポートしていたとしても、音楽が僕らの生活に戻ってきてから、これほどまでにクリエイティビティへのチャレンジを経験したことはなかっただろうと思う。
Alexはリハーサルの途中やライブ中でさえも、メンバーに話かけにいって、アイディアを説明したり、そのために文字通りギターのネックを掴んだり、ドラムを叩くことを躊躇わない。いつだってオーガニックで、直感的なんだ。だからAlexが、この曲のある部分でBenのギターが上手くいってないのに気づいた時(Benが頭を振って”違う”っていうサインをしたんだ。このセクションでどんなギターサウンドが良いか分からないって、これだって思うものが見つけられてないってね)みんな演奏し続け、ノイズと雰囲気をキープしている間、AlexとBenはパートについて色々と言い合っていた。そうして、やがてAlexがリハーサルステージを降りて、教会スタジオ内の端まで走って、ドラムキットをピースごとに持ってくるのが見えた。僕らに弾き続けて!って言いながらね。"今度は何だ?"って感じだったよ。そうして、すぐにドラムキットをセッティングして、Benをそこに招待した。ドラムソロをやれだったか忘れたけど、その後のパート全体のきっかけとなるものを作ろうとしていたんだ。
だから、AlexがBenにシグナルを送って、叩き始めたとき、曲の雰囲気がガラリと変わろうとしていた…何か新しいものに。言葉でうまく表現できないけど、僕らはみんなで一緒に演奏して、今までやったことないものを生み出していたんだ。その瞬間の精神にインスピレーションを受けて、僕らのクリエイティブなチャネリングを邪魔するもの全てを手放して…そして、もう既に20分をマークしていた曲に、Alexが次々とセクションやパートを加えていったんだ。Alexがすごく夢中になっていたから、僕らも全く躊躇したり、色々と考える時間はなかった。Alexはドラムキットを指差して、色々なアイディアを試したんだ。(全く新しいリズムとかたくさん!)Benが思い切り解放できるように。でも、Benはそこに立ったまま、頭を左から右へ、右から左へと動かしていた。まるで、”完全にロストしたよ!助けて!”って言おうとしてるみたいに。または、もうちょっと乱暴な感じだったかも…ラウドに演奏すると、細かい囁きとか、はっきりと聞こえないから、逆に良いね!というわけで、何が起きたと思う…?
Alexがドラムの後ろにまわったんだ!彼はドラムなんて叩いたことない!でも、ただMooseを見て1-2-3-4と叫んだ!そうして、フロアトムを思い切り叩き始めたんだ。自分のパルスを補うようにMooseに言いながら。そして、僕らが混乱する前にやっていたリズムやメロディーを弾き続けろって言った…!ありったけのパッションでフロアトムを叩くAlexを見るのは最高だったよ!まるで子供のような心が蘇った瞬間の美しさや純粋さを見て、僕らみんな笑ったね。それで、Benもアクトやプライドを捨てて、ただその場の雰囲気へと解放できるようになったんだ…だから、Benは自由に叩き始め、そのあとに続いたものは魔法のようだったよ!僕らはそのパートを何時間もノンストップでやり続けたんだ。Alexは、その日の夜にリハーサルをしに来る他のミュージシャンたちのことは、あまり心配していなかったみたい。この時、彼らはもう既に長い曲に新たな20分が加わったなんて知らなかったけど!それでも大丈夫だったはずだよ。だって、僕ら11人みんなで、一つになって、2019年7月5日の夜、演奏したから。それぞれが純粋な感情のベクトルとなって、観客全員をその瞬間へと浸れるようにしたんだ。「The Hunter」の瞬間は本当にすごかったよ…!マジカルだった!
こうやって、みんなと何を分かち合えるかなって窓の外を見ながら色々と思い出して、書き綴っていたら…もう夜になっていたよ。
みんな、またすぐにね…!きっと!
君のガイドであり友人
Jeff