初めて語られる物語 - Summertime Departures
Nov 08, 2020
君が元気だと良いな!限定&コレクターエディション旋盤カットレコード「Summertime Departures」の最後のコピーを手に入れるチャンスを掴んでくれた人の中から、Facebook生中継でAlexに名前を引かれたラッキーな人たちを発表できて、嬉しく思っているよ。みんな、おめでとう!
それはそうと、リストに名前が載っているハッピーな人たちの、再びおよそ5倍の数の人たちががっかりしたことだろう。だから、このユニークなプロジェクトに参加してくれただけでなく、そのプロセス全体を特別なものにしてくれて、本当にどうもありがとう!
そして、忘れないで。「Summertime Departures」旋盤カットレコードを手にできた人も、できなかった人も、また別のチャンスがあるよ!次の限定&コレクター旋盤カットレコードは楽曲「The Hunter」で、日本時間の11月17日24時(18日 深夜0時)から先行販売が開始されるよ。
SOMETIMES I DREAM
みんな楽曲がどう作られたかの裏話などを聞くのが好きみたいだから、「Summertime Departures」のライブバージョンがどうやって出来上がったのかを話そうと思う。特に僕らもライブで演奏するのが大好きな曲だから、初めて話す制作秘話を楽しんでもらえたらいいな!
それでは、制作秘話を始めよう:
あれは、今でもずっと忘れない、あるリハーサルの日だった。一気に全てが音を立てて崩れ落ちるか、または人生最高のリハーサルになるか、そんな感じの瞬間。僕はその両方のシチュエーションを経験してる。エネルギーに満ちていて、感情はものすごくセンシティブ。そしていろんな意味で激しく、けれど何よりも嘘偽りない瞬間だ。だって、Alexには妥協なんて存在しないから。悲劇となるか、悟りとなるか、いつだって、全身全霊である必要がある。
あの日はきっとみんなそう感じていたと思う…きっと、そうなるべき運命の日だったんだ。あれは2019年7月3日の夜。Alexの個人的なプロジェクトを初めてコンサートで披露する48時間前だった。このコンサートは、Alexにとって壮大なヘッドライニング・プレミアだったんだ。特に、その年のモントリオール国際ジャズフェスティバルで最も期待をされていたコンサートだっただけでなく、2週間続くフェスティバルのうち唯一のソールドアウト・コンサートだったことで、話題になっていたから。
少し状況を説明すると、このコンサートは、2016年3月にYour Favorite Enemiesとしてニューヨークでライブをして以来、初めて全員でステージに立つ機会だった。みんなにとって長い旅路だった3年を経て、このとき、僕らは最後のリハーサルに取り組んでいた。プレッシャーがゆっくりと襲い始め、それが演奏にも出始めたばかりに、前日の夜は酷いものだったんだ。あまりにも酷くて、Alexがみんなを止めて、これはカラオケじゃないんだぞってリマインドしなきゃいけないくらいだった。僕らみんなが完全に集中して、曲の本質や、演奏の精神にコミットできないなら、コンサートをキャンセルしても構わないと言ったんだ。当時は、Alexもすごく緊張しているからこそ、そんな風に言ったんだと思っていた。けど今、思い返すと、彼は正しかったと分かる…僕らは、音楽を体現することよりも、自分のパートを演奏することに集中していたんだ。だから、全員揃っての最後のリハーサルでは、気持ちの面においてもソウルフルで、音楽的にも申し分ないものにしたかった。
改めて言うけど、このコンサートはAlexにとって、最初で最後、唯一のコンサートになるはずだったんだ。『Windows in the Sky』のライブコンサートは亡きお父さんへのオマージュだった。だって、このコンサートの日程は、Alexのお父さんが亡くなったのとほぼ同じ日だったから。Alexは家族の前で、古くからの友人たちの前で演奏しようとしていた。どんなアーティストにとっても、ホームギグというのは、いつだって一番、難しいものだ。Alexにとっても、すごくパーソナルなものだったし、僕らもみんなAlexと彼のお父さんに敬意を払いたかった。だって、Alexのお父さんは僕らにとっても長年、父親のような存在だったから。だから、細かいことも含めて全て、完璧に近い状態であることは、ものすごく重要だったんだ。
そのために、長年の友人であるパスカルと何ヶ月も話し合って調整して、最高のステージ&照明のコンセプトをデザインした。Alexは、ステージを2段式にして、総勢11人のミュージシャンを集めた。そこには、Your Favorite Enemiesの5人のミュージシャンたちに加え、ドラムセット2つと、パーカッショニスト、チェロ、トランペットとキーボード奏者がいた。だから、ステージ上に適切なスペースをどうやって確保するか、それは照明エンジニアにとって、かなりのチャレンジであり、綿密に計算する必要があったんだ。また、楽器チェンジやチューニングなどをコーディネートするステージマネジャーにとっても、そしてAlexの指揮に従って常に実験とその場での即興によってネオクラシカルなノイズバンドとなるサウンドのバランスを考えなければいけないハウスサウンド&モニターエンジニアの人にとってもね。どれだけ大がかりで大変だったか、想像できるでしょ?その全てを、このコンサートのために制作したプロジェクションのオリジナルコンセプトや、映像撮影クルー、ライブレコーディング・オーディオステーションと照らし合わせながらやらなきゃいけなかったんだ…言うまでもなく、この最後の”リハーサル”は一際、重要だった。
というわけで、このコンサートに関わる20人以上の人間が(そう、とても大きなプロダクションクルーだったよ)その夜、僕らの教会スタジオに集まり、本番前に最後の調整をしようとしていた。最初の5曲は全てプラン通りスムーズに進んだよ…「Summertime Departures」まではね。Alexのことは良く理解しているから、何かが腑に落ちない様子なのはすぐに分かった。それでも、僕らはみんな曲の最後まで演奏して、徐々に次の曲「Lavender Sky」に移ろうかというとき、Alexが演奏をストップするように言ったんだ。もう一度「Summertime Departures」を演奏したいって。「ただ確認したいことがある」ってね…Alexが「もう一回やろう。ちょっと確かめたいこと、トライしたいことがあって」って言うときは、十中八九、「この曲のあるパートが正しいと感じない」という意味であって、ということは、その部分をより先へ持っていきたいか、もしくは全く違う風に変えたいということだ。たいてい、完全に新しいパートをつくり上げることになるんだけどね。そのとき、その場で。たとえ本番前48時間だったとしても。いづれ、こういう話をまたシェアするよ…!
12年間Your Favorite Enemiesの一員としてやってきたから、僕ら5人はAlexの言葉が何を意味しているのか分かっていた。僕らの中に不安の色が出始めたと、他のミュージシャンやクルーたちが気づいたとき、心地良さと安心で成り立っていたスムーズで良い空間は、突如として、楽譜にメモをとるフリをしながらのヒソヒソ声で埋まっていったよ。一瞬にして、”本番前48時間”という冷や汗を誰もが感じたんだ。テクニカルチームでさえ、「え、今、何かを変更するってこと?」と信じられない様子だった。だって、コンサートは全てが完璧に整っていて、計算し尽くされていたから…2018年12月から、ずっと考えてきて、最近ようやく”これだ”と思えるものを見つけたバランスを変えるって?みんながAlexを見ていた。彼は少しも気にした様子なく、こう言ったんだ:「また最初から「Summertime Departures」をやろう…1, 2, 3, 4」 そうして僕らは演奏した!みんなチャートを演奏しながら、ノンストップでAlexを見ていた。彼の頭の中にあることを理解しようと、彼にだけ聞こえる音を自分たちも聞こうとして…。けど、みんなお互いの心の声がはっきりと聞こえるようだったよ。「これ何のためにやってるの?曲は既に最高なのに!」
僕らは丸々1曲演奏した。本気で最高の演奏だったんだ。1回目のときよりも更に良かったと、僕は思ったし、きっとみんなもそう感じたと思う。最高だったんだ!でも、曲が終わって、その流れのまま「Lavender Sky」へと向かおうとしたとき、再びAlexは、みんなを止めた。もう一度「Summertime Departures」をやろう、と言って。この時点で、何かが正しくないというのは、はっきりと分かっていたけれど、それが何なのか誰にも見当がつかなかった。僕らは2回、この曲を演奏して、2回とも完璧だったんだ…!徐々に、みんなの不安が大きくなっていくのを感じた。それはそうだろう、こんなにも多くの人が関わっていて、みんなAlexのヴィジョンに命を吹き込むため、コンサートをハイレベルなものにするために、全力を注いできたんだ。
僕はミュージシャンたち、クルーを見渡した。みんなAlexを見つめ、ある指示を待っていた。ほんの小さなことでもいい、ガイドラインや、3回連続でこの曲を演奏する前にただ何か少しでもヒントを。でも、Alexはリリックシートに何かを書き込んでいただけだった。周りのみんなが不安がっているのに気づきながら、でもこの緊迫した瞬間において、自分の頭にあることだけに集中していたのさ…。そして、文字を書きながら小さく何かを歌っているのが聞こえたんだ。歌っては、言葉を書き、それを消しては、また書く。僕は、以前、Alexが言った言葉を思い出していた。家族、友人や2006年頃から僕らを追っているメディア関係者の前で演奏しながら、自分の感情をコントロールしきれなくなったときに、自分がどうなるか分からないのが怖いと言っていたのをはっきり覚えていたんだ。僕は、本気で心配し始めていた。隣にいたギター担当のBenもそうだった。「何を考えているんだい、ブラザー?」と尋ねたよ。でも、Alexはただ書き続けて、何かを見つけようとしていた。
永遠かのように感じた数分後、何が起きているのか不安がっていた僕らは、これから起こることに完全に恐怖した。Alexは、とても柔らかい、落ち着いた声でこう言ったよ:「曲の最後はもっと激しく、パワフルにできると思う。心を手放す的なメロディックな終わり方が、何だか違う気がするんだ。最後に曲が続いていく動きに対して、音楽的に安全すぎる気がするんだよ。それが感情をも抑えてしまってる気がする。ちょっとアイディアがあるんだ。だからみんなでトライしたい!より危ない感じと深みを持ってこよう。僕がガイドするよ。もう会話はなしだ。自己を忘れるくらいのゾーンへと、より深く解放しよう。信じて…きっと楽しいよ!」この瞬間、僕は文字通り、みんなの顎が外れる音を聞いた気がする!安全?!何ヶ月も練習してきたんだ!あの部屋にいた大多数の人たちが、1.解放、2.何なのかよく分からないゾーンを知ること、3.Alexの指示に従って演奏すること…というアイディアに乗り気になれなかった…全く楽しそうだなんて思えなかったんだ!
照明のエンジニアでさえ、Alexにもう一度言ってくれと頼んでいたよ。ちゃんと理解したか確認したくてってね。だって、全てがスムーズに調整されていたものを、今この場で考えなきゃいけなくなったから。みんな”コンサートまであと2日しかない!今までのをキープした方が絶対に良い!”って思っていたはずだ。でも、誰も何も言わなかった。Alexは言い出したら聞かないって分かっていたから。
個人的にはAlexのそんなところが好きだよ。他の人が完璧に”絶対”だと考えることを超えた場所に何かを見つけようとする自由を自分に与えている。僕らが初めて会ったときの会話が”自らが課している制限の先にあるもの”についてだったのも不思議じゃないさ…!これがAlexなんだ。どんな状況であろうと、それが何時だろうと、何日だろうと、そういう枠組みからAlexは自由なんだ…慣れていないときは怖いかもしれない。僕らと一緒にステージにいた他のミュージシャンやクルーたちが感じたのと同じようにね!
「ブリッジから始めよう。それで最後までやって、曲の終わりに新しいことをトライしてみよう」とAlexは言った…
1, 2, 3, 4…そうして、ブリッジセクションから始めた。みんながお互いを見合っていた。まるで、みんなで細いワイヤーの上を歩いているかのように、もう既に素晴らしい曲の最後に何をどうしたらいいのか考えながら。ほら、あれだよ、”生きるか死ぬか”っていう感覚?誰も僕らのようにAlexを知らない。でも、あの時点で、Alexがこれだというものを見つけるまで、今夜はずっとこの新しいパートを練習するんだろうなってことは、みんな分かっていたよ!こういうことは、何度もあったから、僕はもう驚かない。いや、前よりはマシになったって言えるかな…!
そうして曲の最後の方になり、誰がリードを取るのか、どんな方向に持っていくべきか、みんなが見極めようとしているのを感じた。僕らは誰もがみんなお互いを頼っていて、誰もがみんな、このコンサートを人生最高の経験にしたいと思っていたんだ。けれど、このとき、この瞬間は完全にピリピリしていて、あまりのストレスに居心地が悪かったよ!最後の音がようやく鳴った…みんなが周りを見渡しては、自分の楽器を見て、また見渡しては、楽器を見てを繰り返しながら、最後の音を鳴らしていた。そうして、じきに音が消えかけようとしていたとき、Alexが素早くドラマーであるムースの方を向いて、「速度を早めてパルスを続けて!ビートじゃなくて、パルスだけ!」と言ったんだ。
Sometimes I dream I can sail through the past
And let my teardrops fall in the ocean, in the ocean
Sometimes I dream I can sail through the past
And let my teardrops fall at your feet
I’ll see you one day
Coming back for me
I’ll see you one day
(過去を抜けて航海できたらと夢見るんだ
海に涙の粒を落とせたらって
過去を抜けて航海できたらと夢見るんだ
あんたの足元に涙の粒を落とせたらって
いつか会おう
僕の元へ戻ってきて
いつか会おう)
…Alexはこの歌詞を、これまでより激しく歌い始めた。ムースはキックとフロアトムだけでパルスを送り、残りの僕らはその時も、最後の音を弾いていた。Alexの歌い方や韻の踏み方は、これまで聴いたことがないものだった。まるで、歌うのはこれが最後とでも言うように、ありったけの情熱と力を込めていたんだ!僕もムースのリードに合わせて、その音を弾き始めた。Alexは同じ歌詞を、みんなが加わるまで何度も何度も歌い続け、そうして、ものすごく盛大なものとなった…!なんてパワフルな激しさだろう!ドラムのパルス、ベース、ギターから響くクレイジーな音に、キーボード、トランペットにチェロ…僕らは高みへと昇っていったんだ。あれはクレイジーだった…!そうして、Alexが僕らの方を向き、腕を高くあげて合図した。それは”止めずに続けて、良い感じだ”っていう意味さ。そして、彼は何かを探しにステージを離れた。だから、僕らはしばらく同じメロディーを弾き続けたんだ。何度も、何度も、何度も、Alexが止めるなと言ったから…!
そして、3本のギターを持ってきて、僕らに続けてくれと頼みながら、それぞれのギターを試し始めた。彼の様子は、その瞬間そのものを超越していたよ。Alexは僕らみんなに解放してほしいんだと分かっていた。自分の不快さから自由になってほしいと。僕らに新しいレベルの”激しさ”、または”狂気”、またはその両方に到達して欲しかったんだ…Alexはギターを一本ずつ繋いだ。でも、探していたものが見つからず、また違うものを探しにステージを離れた。僕らが止まらないように、腕で続けてって合図を送りながら。そうして、戻ってきたAlexの手には、今まで見た中で一番小さなギターがあった。それも真っ赤なやつ…!これは、ファンキーになるんじゃ?!と思って、ちょっとクスッとなったのを覚えてる。その優しくも、パワフルでエンジン全開のハイトーンなノイズを聴くまではね!僕らはみんな、すげーってなって、それが更なるエネルギーになり、そのパートを結局30分は弾いていたと思う!
というわけで、本番44時間前、ここ数ヶ月間、あらゆるピースが完璧になるように調整し、築き上げてきた全てを確認しながら、この全く新しいパートを突然、加えることになったんだ。いいかい、言っておくけど、このパートには、適切なフォームも、テンポも、ストラクチャーもなく、終わるのはAlexがそう合図したとき…
それはそうなんだけど、でも正直、この瞬間はまるで魔法のようで、アルバムの精神をとても良く体現していたと思うんだ。だからこそ、この最後のパートは、僕らがこうしたいと望むコンサートのかたちではなく、あるべきコンサートのかたちとなるために必要なものだったと、みんな分かっていた。
それが「Sometimes I Dream」という「Summertime Departures」のセカンドパートを生んだんだ!この曲は、これまでやってきたライブで毎回演奏しているもので、Alexとあの赤い小さなギターを見るたびに、この夜のことを思い出すよ。僕らみんなが解放し、安全で心地良いストラクチャーではなく、自分の直感を信じた瞬間をね…
そうしたことで、自分たちの枠や制限を超えたものを生み出すことができた。この経験は、あの場にいたみんなを人としても、ミュージシャンとしても、変えたんじゃないかと思ってる…まぁ、僕らの照明エンジニアは髪の毛が少し抜けただろうけど、結果良かったから大丈夫さ!
"自らが課している制限の先にあるものは何か?" これは僕が今でも毎日、問いかけている変化に富んだパワフルな質問だ!
OLD SCHOOL会員の特典パッケージがもうすぐ完成!
メールに注目していてね!Secret Family Cult Clubの原動力についてシェアしたいことがいっぱいあるから!
もうすぐ特典パッケージも発送されるみたいだよ!楽しみにしていて!
君のガイドであり友人,
Jeff